現代文語彙8

情報化社会の基本のおさらい
情報化社会とは情報が、農業、工業製品と同じ価値を持つ社会のことである。

 

 

メディアと人間・・媒介物でしか無いはずのテレビやスマホが君たちを変化させている。テレビは私の幼い頃には電気屋さんか、一部の金持ちの家にしかなかった。特殊な場所に存在する、特別な世界を映し出す機械であった。メディアに登場する人は、人々の関心と注目を浴びる人であり、そこに映し出される世界は、スターや有名人のような手の届かないところにすむ人々の特別な場所だったのだ。ところが現在のワイドショーが映し出す映像は、どこかで私たちの日常とつながっている世界である。そこに描かれる世界はかつてのような異世界ではなく、その地を訪れようとする人、犯罪の起こった土地を見物に行く人が多いやに聞く。体ごと、メディアの描く世界に自分も参加したいと思うのだろう。観光地の様相すら呈しているのだ。ニュース報道の側面を持つ故にリアリティを醸し出すことに成功したワイドショーやYouTubeは、情報を見せ物として創造し作り上げることで視聴者に支持されるに至っている。現実そのものではなく、擬似的な物語をつむぎ出す現代の「かたりべ」なのだ。私たちは「かたりべ」達によって現実を探し出すゲームに誘い込まれているのだ。メディアの描く世界にしか、現実を探る手段がなくなった時、私たちはどうなってしまうのだろうか。

間(ま)について・・時間的な間・空間的な間・状況としての間(間に合う・間が悪い・間が持たない・間をおく)高度情報化社会においては、情報が瞬時に伝わりすぎる故に、間がもたらす「ゆとり」が無くなっている。あまりに早く、大量の情報が流れ込んでくる故に君たちには、それらをゆっくり検討している暇が与えられていないのだ。この間を、取り戻すことが今の君たちには必要だろう。手始めにテレビのスイッチを切ったらどうだろうか。新聞や小説を手にするがいい。

 

 

 

サイバースペースについて・・インターネットを利用して品物を購入したことがおありだろうか。サイバービジネスは今や飛躍的に増大している。犯罪やトラブルも起こっていることはご存じだろう。新しい分野なので環境整備がなかなか追いつかない。パーソナルアイデンティティという言葉を知っているだろうか。自己確認が出来ず、自分は何であるかを知りたいと、スマホを終日眺めつつ、自分探しをしている人も多いことだろうと思う。携帯電話、パソコンを通しての通信など一対一を基本とするパーソナルメディアが普及し、メールのやりとりに代表される電子コミュニケーションは盛んに行われている。顔が見えない電子コミュニケーションは、社会的身分、性別、年齢を無視したコミュニケーションであり、空間的に相手の顔を見ることなく行われている。手紙や電話と違い、即時性と会話の直接性によって妙にリアリティのある深い会話が可能になるのだ。仮想的な空間には位置を示す地図はなく、仮想的な人間関係はどんどん深まっていく。可能性としては地球全体が一つの村として成立するかもしれないとは思っている。メディアにより人間の身体はとどまることなく拡張し続けているとも言えよう。個人のネットワークを中心とするこの電子コミュニティは今後どのような発展を続けていくのか、続けるべきなのか。発信者・受信者が存在すると同時に、そのどちらにもなれない個人も存在するに違いない。この電子ネットワークは新たな社会の階層化を生み出す可能性すら孕んでいるように思われる。

バーチャルリアリティ・・仮想現実は私たちに、新しい次元で現実を喪失させていると言えよう。ファミコンの自動車レースの、あるいは野球ゲームのフェンスに広告を出すスポンサーの存在を知っているだろうか。彼らはテレビ以上に広告媒体としての価値をゲームのフェンスに認めているのだ。いわば「無から有が生まれている」のだ。仮想現実は、人間の経験の拡大化をもたらすものではあるが、誰かによって生み出された客体化されたものに過ぎないことを認識しておく必要がある。

2022年02月02日