現代文語彙11

日本を含めた世界
異文化理解・・二国間の貿易をしているだけなら国際社会などということは問題にならない。移民、国際人、地球人と呼ばれる人々の出現が問題をはっきりさせている。地球的規模の問題、多くの国々が協力しなければ解決できない問題が起こってきたことがこれらの人々の出現を促し始めたのだ。東西の冷戦の終焉と再開、インターネットによる国境を越えた交流、ユーロ通貨の採用などがこれらの問題を加速しているとも言えよう。モノやヒトの出入りが活発化していることは、最近の福井でも見られることであり、君たちも身近に感じているだろう。全く別の考え方をするヒト、違うものを食べるヒト、違う生活をしているヒトとの交流は難しい。フランス人はかわいいウサギを好んで食べ、イギリス人はタコを悪魔の使いとして食べない。異文化理解が出来ずに自国の考え方を相手に押しつけることから、様々な摩擦や事件が起こっている。外国人労働者をめぐる治安悪化の問題もその一つである。日本文化も外国人が増えれば影響を受けざるを得ないだろうし、文化の固有性の変質の可能性もある。

 

文化相対主義・・すべての風俗習慣は、その人の属する文化全体を考慮に入れて把握すべきだとする考え方です。すべての文化は固有の価値を持ち、犯すべからざるものであり、外部から批判することは出来ないとする立場です。

普遍主義とは・・極端な相対主義の立場に立てば異文化交流などできようはずはない。一夫多妻のイスラムの社会では女性を蔑視し、民主主義を否定する。観光目的で行っただけなのに、政治犯にされてしまった人を処刑することを批判しようものなら、内政干渉だと叱られる。アフリカの文化を尊重し、保護しようとしても、当のアフリカ人が先進諸国の文化に憧れ、その文化を取り入れてしまう。豊かになりたがっているのだ。これではまずい、全世界共通の考え方を、理念を定めるべきだと現在は考えられ始めている。それぞれの民族の慣習、文化について風土、背景など考慮に入れた上で批判や議論を大いにして基本的人権等のどの国でも共通した理念を集大成し、価値の体系を模索すべきであると言われている。

 

 

南北問題とは・・地球の北側に位置する経済的に豊かな国と、南に属する貧しい国々との関係における諸問題のことである。これは簡単に資本、技術を援助すればよいという問題ではない。

インドの乳牛をホルスタインなどの牛乳の生産性の高い牛に置き換えることはどんな意味があるのだろうか。果たしてインドは豊かになれるのだろうか。インドでは牛の排泄物を肥料として作物を育ててきたという歴史を持つ。インド原産の牛は牛乳の量は少ないが、その排泄物は十分肥料として使えるのだ。ところがホルスタインの排泄物には、有機肥料としての栄養分がほとんど残っていない。したがってインドの農民は高い北側の先進諸国の化学肥料をお金を出して買わざるを得なくなっているのだ。畜産と農業をひっくるめて考えた場合、少しもインドは豊かになっていないらしい。この例は、生き物が住む世界の多様性の意味を、私たちが見失っていることを教えているのではないだろうか。環境汚染を私たちが生み出してしまった本当の原因はこのことにあるのではないだろうか。

貿易摩擦・・日本製品がダンピングしているとアメリカから指摘されることがかつて多かったように思う。不当に安く売っているという批判だ。日本企業はコストダウンの努力の結果であると主張している。日本より安く売れるのは、アメリカには中間業者が少ないので、流通コストが少ないからだというのだ。日本に進出しようとしているアメリカ企業は、日本の流通機構の閉鎖性を攻撃している。国際競争力のない中小企業を保護する目的で国内にはさまざまな規制がもうけられている。その規制を緩和しろと日本政府に迫るアメリカに押し切られ、少しずつ規制は緩和されている。このことが、日本企業の倒産の引き金になっているし、価格破壊を生み出す一因となっている。アメリカに日本企業が工場を建て、現地の雇用を促進する動きも多い。安い労働力を求め中国や東南アジアに進出した企業も多いが、このことが国内産業の衰退化ももたらしている

2022年02月02日