なり(伝推)・ながら・つつ・が・の と短歌
なり(鳴り・音あり)・ながら・つつ・が・の
○ み吉野の 山の秋風 さ夜更けて ふるさと寒く 衣打つなり
新古今集四八三 (伝聞推定なり)
作者は鎌倉時代の三人の天皇に仕えました。歌の才能が認められ新古今の選者になっていますが、けまりの技術が天才的で飛鳥井流という蹴鞠の流派を創始しています。
み吉野の山の秋風(み接頭辞・畏怖・美称・賛美・敬意・奈良県にある吉野山から吹く秋風・吉野は桜の名所)
さ夜更けて(さ接頭辞・下二段更く連用形プラス接続助詞て・夜が更けて)
ふるさと寒く(ふるさと→古い都・なじみの土地・故郷・吉野には応神天皇・雄略天皇の離宮(別荘)があった。また持統、文武、元正、聖武天皇などが訪れている・形容詞寒し連用形・古い宮殿のあったこの地に秋風が寒々とした感じで吹いている)
衣打つなり(李白の詩の「長安一片月 万戸擣(打)衣声 秋風吹不尽 総是玉関情…」という詩では「擣衣(とうい)」は、砧(きぬた)という丸太に柄のついたような棒で衣を叩いて布を柔らかくするとともに光沢を出す作業で、静かな秋の夜にそれぞれの家庭からこの音が聞こえてくる。遠征に辺境の地にいる夫を思う妻の情が描かれています。衣を打つ砧の音が寒々と聞こえてくる。伝聞で音が聞こえている場合はヨウダと訳さず聞こえてくると訳せば良いでしょう。)
○ わが庵(いお)は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人は言ふなり
古今集九八三 (伝聞推定なりヨウダ)
六歌仙に選ばれている僧ですが、わからないことが多く、ある日、突然、雲の上に飛び去ったという伝説まで残っています。
わが庵は(私の住んでいる粗末な庵(いほり)は)
都のたつみ(子→北 丑寅 卯→東 辰巳 午→南 未申 酉→西 戌亥 と方角を十二支で表すと「たつみ」は東南にあたる・都の東南に位置していて)
しかぞ住む(鹿が住む・しかり(そのよう)係助詞ぞプラス四段住む連体形・ぞの結び・このように住んでいる)
世をうぢ山と(宇治山・京都府宇治市の喜撰山・世を憂し・世の中をつらいと考えて)
人は言ふなり(人は・係助詞は取り立て・私はのんびり過ごしているのに私と違って世間の人は・伝聞推定なり終止形・世間の人たちは(私が世の中から隠れ)この宇治の山に住んでいるのだと噂しているようだ。)
断定か伝聞か(四段言ふは終止形・連体形は同じ→歌の意味から考えると、作者は都から離れた庵に住んでおり、世間の人々が噂しているのを聞いたと考えるのが自然なので、断定ではなく伝聞の助動詞と考える。(昔からの定説で伝聞推定となっている)
○ 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな
後拾遺集六七二(接続助詞シナガラ)
父は太政大臣、母は有名な歌人の間に生まれたエリートでしたが、兼家の養子に出され親元から離れ生活していました。何人かの恋人もいたようですが二十三歳の時、伝染病がもとで亡くなりました。
明けぬれば(下二段明く連用形プラス完了ぬ已然形・夜があけてしまうと)
暮るるものとは知りながら(下二段暮る連体形プラスもの・四段知る連用形プラス接続助詞ながらシナガラモ・夜が明けてしまうと、貴方と別れなければならない、しかし日は暮れるものだから、夜になればまた貴方に会えるとは知っていながらも)
なほ恨めしき朝ぼらけかな(なほ・ヤハリ・形容詞恨めし連体形プラス朝ぼらけ(朝おぼろあけ・朝がおぼろに明けるころ・ほのぼの夜が明けるころ)終助詞かな詠嘆ダナア・コトヨ)
○ 君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ
古今集二一 (接続助詞つつ反復継続)
温和な性格の天皇で、美男子だったので源氏物語のモデルだったと言われています。藤原基経が権力と勢力を手に入れるために、作者は無理矢理皇位につけさせられたと言われています。本人は権力に関心がなく趣味は読書と料理でした。
君がため(貴方のために・差しあげるために)
春の野に出でて若菜摘む(若菜→決まった植物の名前ではなく、食用や薬用になる草。「春の七草」のセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ(カブ)、スズシロ(ダイコン)などが代表的。新春に若菜を食べると邪気を払って病気が退散すると考えられており、一月七日に「七草粥」を食べるのはここから来ています。あなたのために初春に春の野辺に出て「若菜摘み」をする。
わが衣手(ころもで)に(衣手→袖または袂に・摘んでいる私の袖に)
雪は降りつつ(雪が降り降りしている・しきりに降り続いていることだよ)
○ いわしろの 浜松が枝(え)を 引き結び ま幸(さき)くあらば またかへり見む
万葉集百四十一(格助詞が)
作者は皇子でしたが、蘇我赤兄にだまされ、天皇への反乱をしようとしたとして捕らえられ、十九歳で絞首刑とされました。
磐代の浜松が枝を引き結び(磐代→和歌山県南部市の岩代・格助詞の連体の資格・浜松が枝・格助詞が連体格・こうして浜で松の枝を結んでいく・自分の魂をこの枝に引き結んで、この先の無事を祈りたい)
まさきくあらば(有間皇子は中大兄皇子と不仲で、謀反をたくらんだ。しかし蘇我赤兄に裏切られ、計画がばれて捕まってしまい、今護送されている。接頭辞ま・副詞幸く・無事である・ラ変あり未然形プラスば・もし幸いに命が無事であったならば)
またかへり見む(意志む終止形・またここに帰ってこれを見ようと思う)
○ しらつゆに 風の吹きしく 秋の野は つらぬき止めぬ 玉ぞ散りける
後撰集三〇八 (格助詞の)
「吹くからに」の歌で有名な文屋康秀の息子が作者ですが、くわしいことはわかっていません。
白露に(草の葉の上について光っている白露に)
風の吹きしく(格助詞の主格ガ・~しく・頻く・シキリニ~スル・風がしきりに吹いている。)
秋の野は(秋の野の露は、水滴は風に吹き散らされている)
つらぬき止めぬ(四段つらぬく連用形プラス下二段止む未然形プラス打ち消し「ず」連体形・玉はヒモを通してつなぐものだが、そのヒモで貫き通していない)
玉ぞ散りける(係助詞ぞプラス四段散る連用形プラス詠嘆けり連体形・玉が散りこぼれているようだなあ)